1.リターンライダー
皆さんはリターンライダーという言葉をご存知だろうか。
昔取った杵柄で、若い頃に乗っていたバイクにまた跨る40代過ぎの中高年者が増えているのである。
そんな彼らのことをリターンライダーと呼んでいる。
バイクについても原付や小型ではなく中型以上の大き目のバイクが主流になっているそうだ。
そして私も30年ぶりにリターンライダーの仲間入りを果たした次第である。
2.なぜバイクなのか
簡単には理解してもらえないと思うが、そもそも運転という行為には乗り物を意のままに操るという側面がある。
つまり、趣味の世界において、仕事や家庭などのしがらみやルールに束縛されず、自由に操れてしかも遠くへ移動できるという脱現実的な開放感が存在する。
しかも専用の免許を必要とし、個人の持つ運転技術レベルに呼応するという高揚感もある。
確かに車でも同じような開放感を得られるが、そこがリターンなのである。
そう、リターンライダーは若い頃にバイクに乗る楽しさを経験している人種なのだ。
中高年になって趣味の一つとしてこれからバイクに乗るために免許を取る人も存在するだろう。
しかし、若い頃の身体能力や反射神経でバイクを操っていた経験があるのとないのとでは、楽しみよりも恐怖心や緊張感が前面に出てしまうのではないだろうか。
私も30年ぶりにバイクに乗ったが、運転することを身体が覚えており、すぐに交通の流れに乗ることができた。
このワクワク感は昔バイクに乗っていたからこそ思い出すように感じられるものだと思う。
3.装備
バイクは身体が外に出ている分、車に比べて身体に対する危険度が高いのは事実である。
そこでバイクに乗る時は恰好というか装備も重要になる。
ヘルメットは法規上必須なので当たり前だが、ライダーは真夏でも長袖長ズボンが基本である。
半袖や半ズボンで乗っている人を見かけると、もし転んだら、もし接触したらととゾッとするベテランライダーが多いのは言うまでもない。
車でもシートベルトをしないと逆に運転に違和感を感じる人が増えている昨今、ライダーも公道でプロテクターをしないと同様に違和感を感じる人も多いのではないだろうか。
そう、プロテクターの装着はレースなどモータースポーツの時の専売特許ではないのである。
昔から上着やズボンの要所にプロテクターが入っているウェアが多く存在したが、それは今も変わっていない。
基本は上半身では胸部、背中、肩、肘を守り、下半身では膝と脛を守るものが多い。
グローブは骨が出っ張っているところを守るプロテクター付きのものが一般的。
ここのところ話題のアメフト選手のような装備を一見そうは見えないウェアの下に秘めているのがライダーなのだ。
4.バンクの感覚
運転においてバイクと車での一番の違いに、車体を傾けて(バンクさせて)曲がるということがある。
地面に対してバイクと身体と視界が斜めになった状態でカーブを曲がるのだ。
これは車では味わえない運転感覚で、これがバイクに乗りたくなる醍醐味の一つと言える。
映画か何かでパイロットが戦闘機や飛行機以外で手軽にバンクを味わえることからバイクに乗るという話があった。
懐かしいところで「トップガン」という映画でもパイロットがバイクに好んで乗るのが印象的に描かれていた。
自転車でも似たような感覚を味わえるが、それなりのスピードが必要になるため公道ではとても危ないのは言うまでもない。
5.リターンライダーのお約束
40代過ぎの中高年。
人生の大きな山場を登り切るか乗り越えたところで、今後の自分のためにバイクという趣味に戻ってきた輩たち。
それでも自分勝手な訳ではなく、そもそもは家庭や私生活を大事にするのがリターンライダーのお約束。
そのため、趣味でバイクに乗るのは週末の午前中に限られることが多いのではないだろうか。
なぜなら、週末の午後は家族や恋人などと買い物や食事に出かけたりすることが殆どだろう。
もちろん、不意に乗りたくなる時もあるだろうが、あくまでも家庭/私生活が優先で迷惑をかけないのがリターンライダーなのである。
「週末の午前中はちょっと風になってる」
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