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「サッカーは感覚」から「サッカーはデータが10割」へ  ――息子のプレーと一冊の本が教えてくれた“見える化”の力



投稿日
投稿者 y.Arai

2006年中途入社の一児の父親エンジニアです。

 

この春、小学校に入学した息子が、サッカークラブに入りました。
サッカー経験ゼロの彼にとっては、まず「どっちのゴールに向かうのか」から覚えるところからのスタートです。とはいえ、泥だらけになってボールを追いかける姿には、親として応援したくなる何かがあります。

 

ただ、私はどちらかといえば「観察して考えるのが好き」な性格で、家事や子育ての中でも、ちょっとした行動の変化に目を向けるのがクセになっています。そんな性分もあってか、「ただ応援するだけじゃなくて、何かもっと良い関わり方があるのでは?」と考えていたときに出会ったのが、イアン・グラハム著『サッカーはデータが10割』という一冊でした。

◆感覚から科学へ:リヴァプールFCを支えた“見えない貢献”の評価

イアン・グラハムは、世界屈指のサッカークラブ、イングランドのリヴァプールFCでチーフアナリストを務めた人物。彼は物理学博士という経歴を持ち、サッカーの現場に「科学とデータの視点」を持ち込んだ第一人者です。

 

彼の仕事は、ただ試合を観るのではなく、「なぜゴールが生まれたか」「どんなプレーがチームを勝利に近づけたか」を、膨大なプレーデータから読み解くこと。得点や目立つシーンだけでなく、「地味でも重要なパス」「ポジション取り」「相手の攻撃を防いだ動き」など、見えにくい価値を評価する視点に、大きな感銘を受けました。

◆息子の小さなプレーにも、“データ的価値”がある

先日の練習試合。息子は一度もゴールやアシストに絡みませんでした。
でも、私がスマホで撮った映像を見返してみると、「相手の前に立って進路をふさいでいた」「味方にパスの選択肢をつくるために動いていた」など、目立たないけれど大事なプレーがいくつもありました。

 

これまでは「うまく蹴れた?」「ボールを奪えた?」くらいの視点でしか見ていなかった私ですが、イアン・グラハムの分析方法に触れることで、「どんな意図があったか」「どこで良い判断ができたか」という、内面の成長や考え方の変化に目を向けられるようになりました。

 

◆日常生活も「見えない貢献」で成り立っている

この本を読んで気づかされたのは、サッカーだけじゃなく、私たちの日常生活も“見えない貢献”に支えられているということです。

 

たとえば、子どもがきちんとご飯を食べたり、時間通りに学校へ行けるのも、その裏で「声かけをした」「準備を手伝った」「前日にお弁当の中身を考えた」といった、地道な働きがあるからこそ。でもそうした小さな努力は、誰かに褒められるわけでもなく、つい「当たり前」になってしまいがちです。
だからこそ、グラハムのように「その行動が、どんな結果につながったか」をきちんと見ようとする姿勢が、家庭にも大切なのだと感じました。

 

◆「今日もいい判断ができたね」と伝える関わり方

本を読んでからは、息子との関わり方も少し変わりました。
以前は「がんばったね」「ナイスシュート!」などの声かけが多かったのですが、最近は「今日は相手のドリブルを止めにいったね」「味方がパスを出しやすいように動いてたね」と、“なぜそれが良かったのか”を一緒に振り返るようにしています。

 

「よくやった!」だけではなく、「どうしてそれがいいプレーだったのか」を伝えると、息子も自分の判断や工夫に自信を持つようになってきたように思います。

そしてこれもまた、家族の中で大切なことだと思うのです。
うまくできなかった日も、「何が原因だったのか?」「次はどうしてみる?」と一緒に考える時間を持つこと。それは、親が子どもに与える“データ的な視点”でもあります。

 

◆「見える化」で、おたがいの価値を認め合う暮らしへ

『サッカーはデータが10割』は、サッカーの専門書に見えて、実は人と人との関わり方のヒントが詰まった一冊でした。
誰かの“目立たないけれど確かな貢献”に気づけるようになると、家の中も、子育ても、もっと温かく、前向きなものになるように感じます。

 

サッカーの勝利も、家庭の穏やかさも、けっしてひとつの“目立つ成果”だけでつくられているわけではありません。

日々の中にある小さいなプレーや判断を、ちゃんと見て、ちゃんと伝えること。
それが、この本から私が学んだ、もっとも大切なメッセージでした。

 

<追伸>
息子のサッカー動作をどうにかデータとして可視化できないか考えています。良いアイデアがある方は教えてください!


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