仲間のひとりと出会い、塩谷川エイドから力を合わせて最凶の敵に立ち向かい、いい湯らていエイドに到着した前回の投稿の続きになります。
今回は、大苦戦となったロードとの戦いの先に勇者4人が集結し、大岳山頂を目指しての超急登との戦いの様子をお伝えしたいと思います。
※地理院タイルにコース・エイド等のレース情報を追記して掲載
ほぼ走れなくなったロードが続く
いい湯らていエイドを出発すると、暫くの間は、腰の状態が元に戻るまでゆっくりと歩くことになります。そうした中、カップヌードルを平らげてスープまで飲み干したせいか、喉が乾いてきました。なので、最初に見付けた自販機でミルクティーを購入し、喉を潤すことにします。
次のよってげ邸エイドまでの区間はロードのみ5.5Kmとなっています。ほぼ平坦と緩やかな登りの繰り返しなので、普通なら楽勝で走ることが出来るはずですが、これまでのダメージといい湯らていエイドで休憩した影響で体が固まったようで、その上、足の指の痛みも倍増しています。更に強烈な日差しも加わり、走り始めてもすぐに諦めて歩いてしまいます。遠くに小さくI井さんの後ろ姿も確認出来ますが、距離を縮めることが出来ません。ただ、距離も広がっていないようなので、I井さんも同じような感じなのでしょうか?
この暑さの中、最難関とも言える大岳との決戦を迎えることになるのは、間違いなさそうです。雨が降っていれば晴れて欲しいですが、こういった日差しをモロに浴びてしまうと、「霧雨くらいがちょうどいいかなぁ…」と思ってしまいます。
ゴールを目指す時間は十分過ぎる程あるし、「この一歩一歩が少しずつゴールに近付いている」と思うようにします。そして、ただ黙々と一定のペースを刻みながら歩き続けていると、時々、沿道の住民が笑顔で声を掛け、励ましてくれました。
よってげ邸エイド
いい湯らていエイドからは、ほぼ歩き通したという感じで1時間1分を費やし、よってげ邸エイドに到着です。すると、スタッフのお姉さんが両手を高く上げて振りながら迎えてくれたので、それに応え、同じように両手を高く上げて振り返します。
その後、椅子に座り、下記を補給しながら休憩していると、突然大粒の雨が降り出し、屋根のある場所に避難して凌ぎます。すると、雨はすぐに上がり、スタッフに拍手で見送られながら、よってげ邸エイドを出発です。
・わらび餅1個(冷えていて美味しいよと勧めてくれた)
・バナナ半分
・氷水1杯
・キャラメルマキアート(持参)1杯
・きびだんご(持参)2個
足の指の痛みと暑さの先に勇者4人が集結
ここから吉ヶ平エイドの区間もロードのみで、これまでよりも急になった勾配が8Km続くことになります。
相変わらず足の指の痛みは続いていますが、特に右足の小指が強烈になってきたので、途中、道路の端に座り込み、シューズとソックスを脱いで確認してみます。すると、デッカイ水ぶくれが出来ていて、それがシューズに当たって激痛に襲われているようです。トレイルを歩くより、ロードを歩く方が簡単ですが、路面が硬いせいか、遥かにダメージが蓄積されていく感じがします。
去年の7月に『OSJ ONTAKE100』で100Kmのレースに出た時と同じような状況になってきています。土砂降りの雨や水溜まりで足が濡れ、この時も足の指の水ぶくれに悩まされて走れず、地獄のような苦痛の連続だったことを思い出します。
足の指の痛みと暑さに大苦戦しながら、スマホの地図アプリを見る度に、「まだここかぁ…」と溜息が出て暗い気分になる中、自販機を見付け、フルーツオレでひと息入れます。こういう時のひとり旅は、気持ちのダメージが倍増していきます。
結局、出来ることと言えば黙々と歩くことしかありません。こうした中、吉ヶ平エイドのすぐ手前まで何とかやって来ると、前方に3人のランナーの後姿を発見です。ひとりはI井さんで、他の男性2人と話をしながら進んでいます。
パパ隊長が追い付いて挨拶をすると、これでゴールまで一緒に旅をする4人が集結したことになります。今回の場合、4人全員が主役なので、勇者4人パーティということになりますかね?そして、100マイルは間違いなく『大魔王』で、80Kmは『小魔王』ということになると、130Kmは『中魔王』となり、その打倒を目指す大冒険が始まります。
ちなみに、他の2人のランナーは知り合いということで、ひとりは岩手から来られたI根さん、もうひとりはベトナムに30年在住されているY本さんです。Y本さんは去年もこのレースに参戦し、東南アジアを中心に色々なロングレースに参加されているそうです。
吉ヶ平エイド
よってげ邸エイドからの8Kmを1時間38分を費やしての到着です。
長かったロード地獄から解放されると、崩れ落ちるように芝生の上に座り込みます。しかし、先行して到着していたランナーがガリガリ君を食べているの発見したので、何とか再び立ち上がり、パパ隊長も買いに行きます。暑い中のロードの練習では、いつもお世話になっていたガリガリ君なので、思いの外の救世主です。
下記を補給した後は、シューズを脱ぎ、芝生の上に大の字で寝転がると、最高に気持ち良く、他の3人も同じように寝転がり、ひと時の極楽時間を堪能します。
・カロリーメイト(持参)半分
・ガリガリ君(購入)1個
・麦茶をソフトフラスクに補給
十分にリフレッシュした後は、130Kmの『中魔王』を倒すため、最難関とも言える大岳に挑むために出発の準備を進めます。すると、スタッフに熊鈴を携帯するように強く勧められ、I井さんを真ん中にして出発します。というのも、I井さんの熊鈴が壊れてしまい、音が出なくなっていました。
垂直のような超急登との激闘!
吉ヶ平エイドを出発すると、すぐにトレイルが始まりますが、暫くの間、緩やかな勾配が続き、平和で安全な時間が過ぎていきます。この時間帯、ゆっくりと歩きながら、4人パーティの間で改めて自己紹介をし合って名前を確認し、パパ隊長が日本百名山を完登していることを教えることになります。
吉ヶ平エイドから約1.7Km進み、下から見上げると、垂直のように見えるトレイルが現れました。これからの超急登に備え、ここでストックを仕舞い、両手を自由に使えるようにしておきます。そして、誰が先陣を切るかという話になり、日本百名山を完登している『山のスペシャリスト』のパパ隊長に白羽の矢が立ちました。すると、ちょうどこの時、明らかに100マイルに挑んでいると思われるランナー4人(そのうちのひとりは女性の優勝者)が走って追い付いて来たので、道を譲って先に行って貰います。我々より遥かに過酷な状況のはずなのに、どう見ても我々より元気なようです。
ここから本格的に大岳山頂を目指しての戦いが始まり、パパ隊長、I井さん、Y本さん、I根さんの隊列で取り付きます。それにしても超急登の連続で、トレイルの両側はスパッと切れ落ち、滑落すれば、間違いなくお陀仏です。両手も使い、四つん這いのような姿勢となり、慎重にバランスを取りながら、超急登の区間を一気に捻じ伏せて登り、やや勾配が緩やかになった場所があれば、そこで後続を待ちます。ただ、浅草岳の時のようにズルズル滑ることはないので、安心して足場を確保し、踏ん張ることが出来るのが幸いです。そして、このパターンを何度も繰り返すことになりますが、短距離・短時間で標高を稼ぐことが出来るのはありがたい限りで、標高が上がるに従って、粟ヶ岳方面の展望も開けてきました。
暑い日差しが照りつける中、汗が噴き出し、息が上がりますが、特にY本さんは滝のような汗を流しています。話を聞くと、この大量の汗のせいで、熱中症とかになり易く、レースではリタイアに追い込まれることも珍しくないそうです。
こうした超急登との戦いが続く中、網張山山頂(標高1024m)の手前からやっと勾配も緩やかになってきて、約1.7Kmで標高差約470mを登り切ることが出来ました。そして、網張山山頂から先はこれまでのような過酷な超急登からは解放され、暫くすると、昨晩、激下りと渡渉で大苦戦した大岳~塩川谷エイドのルートに合流です。戻って来ることには何とか成功はしましたが、全力を尽くした結果、100マイルではなく、130Kmレースになってしまいました…
大苦戦した山頂稜線とのリベンジマッチ
ここからは、昨晩、ズルズルの激下りに大苦戦した山頂稜線を、今度は登り詰めていく戦いとなり、一旦休憩して呼吸を整えた後、これまでの隊列を維持して出発します。すると、これまでは超急登ではありましたが、ほとんど踏み荒らされていなかったので、グリップが効いて、滑ることはほとんどありませんでした。しかし、これからのルートは昨晩から散々荒らされていて、滑り落ちた痕跡で埋め尽くされた中を登って行くことになります。
それでも、今日一日晴れていたせいか、昨晩のように滑ることはなく、何とか足場を確保しながら登って行くことが出来るようになっています。それでもキツいことに変りはなく、両手も使い、四つん這いとなりながら捻じ伏せて登って行きます。そして、やや勾配が緩やかになった場所があれば、そこで後続を待つという、これまでの超急登対策を繰り返します。それにしても、真っ暗闇の中、よくこんな激下りを下って来たと思います。
標高が上がるに従い、周囲にはガスが漂ってきています。そうした中、中津又岳山頂(標高1388m)に到着すると、ここで座って休憩することにします。すると、小さな虫が大群で纏わりついてきて、I根さんに虫除けスプレーを貸してもらうと、これが効果覿面で、虫の襲撃から解放されました。そして、大岳山頂からの下山中、日が暮れるかもしれないので、ライトの準備をしておき、Mag-onでエネルギー補給です。
中津又岳山頂を出発すると、大岳山頂までは残り僅かで、緩やかに一旦下って、急登を一気に登り返せば、大岳山頂が見えて来ました。
今回はここまでになります。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
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